食べ聞かせ



「粕汁」


寒くなってくると食べたくなるのが粕汁。
子どもの頃はそんなに好きではなかったのに、
大人になってからその美味しさを感じるようになりました。
 
ひとくちに粕汁といっても、それぞれのお家によって入れる具材も違いますよね。
我が家の粕汁はというと、塩鮭と、大根、人参、こんにゃくに薄揚げという
至ってベーシックなものでした。
少し他と違うところというと、塩鮭は塩鮭でもアラの部分を使っていたことと、
白味噌を入れていたところでしょうか。
鮭のアラ香ばしく焼いてから入れると、骨から驚くほど旨みが溶け出しておいしくなるのです。
ほんのりと甘く、酒粕の香りがふわっと漂う粕汁は冬の定番でした。
 
粕汁に使い切れなかった余った酒粕は、母が甘酒にしてくれます。
当時の石油ストーブは上の部分が鉄板のようになっており、ヤカンを乗せたり、
鍋を温めたりできるようになっていたのですが、
そこに小さな鍋と水、砂糖を入れてコトコトと煮て甘酒を作るのです。
仕上げにおろし生姜を入れて出来上がり。
 
ぬくぬくとコタツに入って母と一緒に甘酒を飲んでいた冬の情景は今もよく覚えています。
大人になってからは、甘酒より酒粕の方が好きになりましたが、
今でも時々無性にあの甘酒が飲みたくなる時があります。
自分でも作るのですが、思い出もプラスされたあの母の味には敵いませんね。
 
そもそも酒粕は、お酒を絞った際にできるいわば“搾りかす”です。
とはいえ、最近は日本酒の製法も変わってきていて、
酒粕の生産量も減ってきているということですので、貴重になりつつあるのかも・・・。
酒粕は1月から2月にかけての新酒の時期に多く出回ります。
絞りたてのものは風味が良く香りも立って、やはり美味しいですね。
アルコールが含まれているため日持ちはしますが、あまり長いこと常温で放置しておくと
酵素の作用により発酵が進み、色も茶色く変色していきます。
 
奈良漬のあの色は、発酵が進んだ酒粕の色ですね。
あと1ヶ月もすれば新酒が出回り、そして酒粕も多く出るようになります。
ぜひ新鮮な酒粕で、おいしい粕汁と甘酒を作って楽しみたいと思います。
 
 
 


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