食べ聞かせ



「苺ジャム」

苺ジャム
苺を煮ると、何とも言えない甘い香りが部屋中に漂います。
幸せの香り・・・というと大げさかもしれませんが、
心がやわらかくなるような、思わず微笑んでしまうような、そんな香りがします。
 
子供の頃、学校から帰ると家の外までこの苺の香りが漂っていました。
玄関を開けると家中苺の甘酸っぱい香りに満ちていて、
まるで魔女のようにグルグルとお鍋を混ぜながら苺ジャムを炊いていました。
当時なぜかトーストが食べられなかった私でしたが、母が作った苺ジャムを塗れば、
不思議と美味しく食べることができました。
苺の香りがしっかりとした手作りのジャムの美味しさは、
やはり市販のものより際立っていたのでしょう。
 
大人になってからは、自分で毎年苺ジャムを作るようになりました。
いい苺はジャムにするのはもったいないので、
シーズンの終わりに出回る安価な苺を使います。
小粒で、少し潰れたようなものなら1パック200円くらいで売っていますので、
それをたくさん買って、ジャムにするのです。
 
たっぷりの砂糖をまぶしてしばらく置くと、苺から水分が出てきます。
レモンをギュッと絞って火にかけ、コトコトと煮詰め、仕上げにハチミツをひと匙。
このハチミツで、グッ風味良く仕上がります。
熱い内に煮沸した瓶に詰め、しっかりと蓋をすれば、1ヶ月後も美味しく食べることができます。
家庭で簡単にできる保存食ですね。
 
市販のものはほとんどそうですが、長期間保存する場合は
仕上がりの糖度を50〜60%にする必要があります。
でもせっかく家で作るなら、甘さを控えて苺の香りを楽しんでみるのもいいと思います。
お砂糖を変えたり、レモンの代わりにオレンジを入れたり、
色々な工夫をするのも楽しいものですよ。
 
今年も苺の季節到来です。
私が今でも毎年苺ジャムを作るのは、もちろん美味しいからということもありますが、
あの作っている時の何とも言えない香りと満足感に浸りたいからなのかもしれません。
普段はお菓子の類を一切作ることがなかった母が、
なぜ苺ジャムだけは作っていたのかは未だに疑問ですが、
もしかしたら母も私と同じく、あの『幸せの香り』に包まれていたかったからかもしれませんね。
 
 


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