食べ聞かせ



「うぐいす餅」

うぐいす餅
うぐいすは「春告げ鳥」とも呼ばれる春を代表する鳥。
ちょうど梅が咲き始める頃、
「ホーホケキョ」という美しい声を聞くことができます。
うぐいすが鳴き始める春になると思い出すお菓子、
それがうぐいす餅です。
 
うぐいす餅はその名の通り、うぐいすを模した和菓子です。
その特徴は、青きな粉を使った美しいうぐいす色と
両端を少しつまんで作る美しい形にあります。
うぐいす色の青きな粉をまぶしたやわらかい求肥の中に餡が入っており、
その愛らしい姿はまさにうぐいす。
通常きな粉は大豆を炒って粉末にしたものです。
 
一方、青きな粉は大豆は大豆でも青大豆とよばれる
青えんどう豆からできています。
通常のきな粉に比べて香り高く、美味しいとされています。
 
今でこそ全国に広まったうぐいす餅ですが、
発祥は奈良県の老舗和菓子店だという逸話があります。
豊臣秀吉の弟であり、有能な片腕として知られた豊臣秀長は大和郡山の城主でした。
ある時、兄である秀吉を茶会に招くことになり、その際に秀長は
「兄のために今までにない面白い菓子を作れ」と菓子職人に命じました。
その際、初代菊屋の主人が献上したお菓子がこのお菓子だったのです。
秀吉はその美しさ、美味しさに大層感激し、
その菓子を「うぐいす餅」と名付けたとのこと。
さすが秀吉、センスがありますよね。
 
子供の頃、我が家には製菓器具などがあまり揃っていませんでした。
蒸し器やお鍋など、家にある器具でできる数少ないお菓子の1つが、
このうぐいす餅でした。
初めて作ったのは確か小学生くらいだったでしょうか。
珍しく母も褒めてくれたので、以来よくこの和菓子を作るようになりました。
 
田舎から遊びに来ていた祖母のために、
一生懸命このうぐいす餅を作ったことはよく覚えています。
今でもうぐいす餅を作る度、祖母の嬉しそうな顔が浮かびます。
もう記憶を失くしてしまった祖母のために、
いつかまた私が作ったうぐいす餅を一緒に食べながら、
春を愛でたいと思う今日この頃です。
 


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