食べ聞かせ



「お雑煮」

お雑煮
元旦の朝に、決まって母が家族に聞きます。

「お雑煮のお餅、何個食べる?」

「3個!」と、姉と私。
お餅が大好きな父は勢いよく「4個!」と答えます。
それぞれが、いくつお餅を食べられるかを競ったものでした。
 
今井家のお雑煮は、白味噌に丸餅、そして具は人参、大根、水菜といったものです。
とろりとした白味噌仕立ての汁の中に丸餅が入っており、
少し甘い白味噌の汁と絡まったお餅が何とも言えず美味しいお雑煮です。
丸餅と丸く切った人参と大根には、「まぁるくまぁるく、円満に」
といった意味が込められています。
 
父と母が結婚して、初めて一緒に迎えた元旦の日、
父は母が作ったお雑煮を見てびっくりしたそうです。
母が差し出したお椀には、なんと甘く煮た小豆のお汁とお餅が入った『ぜんざい』が・・・!
母は島根県出身で、実は島根地方ではお雑煮といえば『ぜんざい雑煮』が主流。
父は大阪の出身だったので、お雑煮といえば『白味噌に丸餅』が当たり前。
お互いに、「え〜っ!!何それ!!」となったそうです。
 
翌年からは父に合わせて関西風のお雑煮を作るようになった母ですが、

父はその時の衝撃が忘れられないらしく、未だにお正月にはその話をします。

 

実はお雑煮ほど地域色が出るものはありません。
お雑煮には大きく分けて、関東風と関西風があるのはよく知られていますよね。
関東風は澄まし仕立てに焼いた切り餅。
関西風は白味噌仕立てに煮た丸餅。
でも、実はそれ以外にも地域色豊かなお雑煮はたくさんあります。

岩手県では、くるみ餅のお雑煮が有名ですし、

香川県では白味噌仕立てのお汁の中に、甘い餡入りのお餅を入れます。
奈良県では味噌仕立てのお雑煮で、お餅を取り出して甘いきな粉をつけて食べます。

それ以外にも、本当にたくさんのお雑煮が存在しています。

バラエティ豊かなお雑煮は、その土地土地に根ざした立派な食文化です。
 
元々、お餅は日本人にとっては『ハレの日』の特別な食べ物でした。
新年を迎えるにあたって、お餅をついてその年の産物とともに年神様に御供えし、
そして元日にそのお供えをお下がりとして
皆でいただいたのがお雑煮の始まりだとされています。
お雑煮を食べることで、旧年の収穫や無事に感謝し、新年の豊作や家内安全を祈ります。
お正月にお雑煮を食べることには、ちゃんとした意味があるんですね。
 
今年も間もなくお正月です。
新年を寿ぎ、健康と収穫に感謝を捧げる。
日本人としての自分を改めて感じることができる素敵な節句だと思います。
 
 


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