食べ聞かせ



「おせち料理」

「おせち料理」
おせち料理と聞いて何を思い出しますか?

黒豆?かずのこ?田作り?

おせち料理と一言で言っても、それぞれの家の味や特徴があって、とっても楽しいものです。
今はおせち料理を全て手作りで作る家庭も減ってきており、
デパートで買ったり、一部だけ作ったりといった場合が多いのではないでしょうか。
確かにおせち料理はとても大変です。
 
煮物だけでも、椎茸に人参、蓮根、こんにゃく、くわい、里芋、筍にごぼうと、
10種類近くあります。それを別々のお鍋で炊いていくわけですから。
しまいにはお鍋が足りなくなってしまうこともあります。
 
もちろん煮しめだけではおせちになりませんので、
数の子や棒だら、昆布巻き、田作り、きんとんなどなど、
スタメン選手も欠かすことはできません。
こうして何十種類もの具材を一度に作り、
さらにそれをお重に美しく詰めていかなければならないのですから、

おせちをお家で作らなくなるというのも頷けます。

 
ひと昔前までは、1つの家庭に複数の女性がいました。

いわゆる2世代、3世代家族というやつですね。

同居が当たり前だった頃は、おせちの頃になると自然と女性達が集まり

手分けして煮炊きをしていたわけです。

黒豆を炊くのが得意な伯母さん、棒だらを炊かせたら
右にでるものはいないだろうお母さん、
でもやっぱり煮しめの味を決めるのはおばあちゃんじゃなくっちゃ!
・・・といった具合に、それぞれの得意分野で分担しておせち料理を作っていたわけです。
ところが、核家族化した現在ではお母さん1人が奮闘することになってしまいます。

これじゃますますおせちの外食化が進んでしまいますよね。

これも時代の流れなのでしょうか・・・。
 
そういう我が家はどうだったかというと、うちも例に漏れず核家族世帯でした。

でも、幸いなことにご近所付き合いが盛んだったため、

お隣のご家族と一緒に作ることが常でした。

年末の慌ただしい雰囲気の中、朝から晩まで料理をしていた母とお隣のおばさん。

元々料理を作るのが好きだった私は、自然と2人を手伝うようになりました。
そして小学3年生くらいになった頃からでしょうか。
いつの間にか栗きんとんは私の担当になっていました。
「栗きんとん係」の誕生です。
バタバタと動きまわる母達に混じって、一人前にスペースをもらい、
茹でたサツマイモをせっせと裏濾す9歳の私。
もちろん今より腕力も身長もないので、1つ濾すのも一苦労です。
サツマイモが冷めてますます濾しにくくなり、
何度も網を洗っては、網目に詰まった芋の繊維を流します。
濾すためのしゃもじを持つ手が痛くなり、足もパンパンになります。
飽きっぽい私が文句も言わず何時間も芋の裏漉しをするなんて、母もびっくりしていましたが、
多分任されたことの嬉しさと同時に、責任も感じていたのだと思います。

 

新年を迎え、皆でおせち料理を食べながら、

「このきんとんはサヤが作ったんやで。」

「へぇ!上手にできてるなぁ!」

と褒めてもらうことで、それまで美味しいと思えなかったおせち料理が

何だか美味しいと思えるようになりました。不思議なものですね。
 

以来20年間、ずっと私はきんとん係です。

でもきんとん係の他に、数の子係や出し巻き係なども増えました。

そして最終的に全て一人でできるようになりました。

私が20年間かけてマスターしてきたものを、今少しずつ生徒さんに伝えていっています。

おせちのレッスンに来て下さる生徒さんも多数です。

願わくば、この生徒さん達には今井家の味をベースにしつつも、

各人で工夫を凝らし、それぞれの家の味を創っていってもらいたいと思います。

 


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