食べ聞かせ



私の家の味自慢 「味噌」

私の家の味自慢「味噌」
『手前味噌』という言葉をご存知でしょうか。

辞書をひくと、「自分で自分のことを褒めること。自慢」とあります。

よく、「手前味噌ですが、私どもの宿はお料理が美味しいと評判で・・・」などと、
自分の達のことを褒める前に、謙遜の意味で使用することも多いと思います。
 
「味噌を買う家は蔵は建たぬ」という諺があるほど、昔は各家庭でたくさん味噌を作っており、
家の数だけ味噌の味もあったといいます。
また、それぞれに自分の味噌に自信をもっていて、
「手前(自分)どもで作った味噌ですが・・・」と客人に振舞って自慢したことから、
『手前味噌』という言葉が生まれたと言われています。
 
兵庫県の海側では、春になるといかなごの釘煮を作り、
ご近所、親戚に配るという風習があります。
親戚に釘煮を送ると、しばらくするとその家の釘煮が送られてくるのですから、
考えてみればなんのこっちゃわかりませんよね。

でも、これも味噌と同じで、「私の家の味自慢」なのです。

とても日本人らしい自慢の仕方で、ほほえましく感じてしまいます。

 

私が生まれ育った街は大阪でも下町の部類に入るのですが、

私達家族が住んでいた長屋は今どき珍しいくらい、ご近所付き合いが盛んでした。

それこそ味噌やお醤油が切れたらお隣に借りに行くようなことも、

日常当たり前に行われていました。
 
私の実家は不思議と人が集まる家で、来客も多くありましたし、
また、平日の昼間にはご近所の奥サマ達が夕べの晩御飯の残り物のおかずを持ち寄り、
よく昼食会が行われていました。

考えてみれば、昼ごはんを作らずに済み、また色んな種類のおかずが食べられて、

なおかつ残り物を片付けることができるのです。
まさに1石三鳥の主婦の昼食会ですよね。
 

でも、今思うとその昼食会がまさに『手前味噌の会』だったと思います。

自分が作ったものを食べさせる楽しみ。ひいては自分の味を発表できる場であり、

自慢の場でもあったのだと思います。

それぞれが意気揚々と皆に作り方を説明する姿に、
子供ながら「ここは邪魔してはいけない場面なのだ」と感じていました。
 

料理は、食べてくれる人を喜ばせるためのものです。

でも時に自分の腕を褒めてもらいたくもなるのです。

味噌を自慢した昔の人のように。自分の料理を自慢したあのおばさん達のように。

 

時代は変わっても、変わらないものを一つを見つけた気持ちです。

 


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